赤地に白く、「十月」。くっきりと染め抜いたネオン看板。階段を上がってドアを開ける。なにやら古い時代に紛れ込んだ印象。とはいえ、店内、けっこうすっきりしている。店主は、くぼたかずこさん。たおやかでやさしそうな女性。だが、そこは酒場の店主、なにかあるぞという印象も。
 
  ----- めずらしい名前ですね。店名はどこから?
  ママ ロシア、十月革命の、赤い十月への思いでドアを開けられるお客様もときにいらっしゃいますが...。十月生まれ、それが由来です。
 
  ----- 開店はいつ?
  ママ 2005年7月開店。まあ、なんとか続いてますね。ゴールデン街で酒場をはじめるなんて、おもってもみなかった...。それまで普通の会社員でしたし、ひょんなことからね。
 
 かずこさん、月一回、「十月通信」というのを発行している。彼女の作る短歌や店の催しもの、日本酒の会や「十月ギャラリー」の案内が載っている。短歌はついこの頃、くぼたかずこ歌集『とんとん月を抱いて帰ろう』(ながらみ書房)が出版されたばかり。
 
  ----- 絵を展示してらっしゃいますね
  ママ 「十月ギャラリー」は、中堅からベテランの方を中心に、新進の若手の作品もまじえて、月替わりあるいは半月替りで。年に二回ほど、写真家特集をします。
 
  ----- 日本酒の会ってのは?
  ママ 毎月一回、最終土曜日にやってます。すでに都道府県をひとめぐりし、二巡目に入りました。この会だけでおおよそ250本ほどの日本酒を飲みました。うるさい蘊蓄なし、わいわいがやがや、楽しくやってます。
 
  ----- 短歌が、載ってますね?
  ママ つたない歌ですが、お客様のおすすめで載せはじめました。店のことや終わって帰る帰路のことなど詠んで、皆さまに読んでいただいてます。
 
  ----- お客様はどのような方が多いですか?
  ママ ひと括りにはできないですね。あたりまえですが。絵描きさんや写真家だけでなく、音楽家もいれば、編集者もジャーナリストの方もいらっしゃいます。お勤めの方も多いですよ。お一人でみえる女性のお客様もけっこういますね。酒が好きで、人が好きで、話が好きでといった共通項はあるかな。もちろん、一人静かに飲まれる方もいます。毎日のように顔を出される方もいれば、年に数回というお客様もいらっしゃいます。上京するたびお顔を出される方も。どこの酒場もおなじでしょ?
 
  ----- そりゃ、いろいろな方がいます。また、ゴールデン街、昔と比べれば静かになったとは聞きますが、喧嘩をする方もいますからね。
  ママ ときどき不思議に思うんですよ。お客さま、皆さん気立てがいい方ばっかりで。この店にいるときだけいい方になるんでしょうかね?
 
  彼女の歌集『とんとん月を抱いて帰ろう』から。
♪ 鬼女なれど笑顔颯爽酒場(みせ)に立つ口から棘が出ませんように
♪ あす生きるために今夜も酒飲むの言ってくれるねおんな三十
 

 いやいや、とても鬼女にはみえません。笑顔がすてきな、大人の女性である。ま、女性はこわいって言いますけどね。さいごに。十月通信に「映画日記」欄があり、なんと、月に20本以上みている(!)。さて、この辺りで、インタビューメモなど取るのをやめて、店内に流れる音楽を聞きながら、お酒を進めることにしよう。(文責・久坂)


 
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住所 新宿区歌舞伎町1-1-10
電話 03-5272-1171
営業時間 午後5:00 (土曜・祭日は7:00)〜午前0:00
定休日 日曜日
席数 カウンター9席、ボックス4席
予算 2,000円〜
チャージ 1,000円 (つきだし2品付き)
ボトルチャージ 1,500円
ワンショット ビール (中) 600円〜
ボトルキープ 3,500円〜
毎月最終土曜日「日本酒の会」 (会費2,500円)
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